この事業会社では、自らがここに陥っていること、グロースできない理由があることを理解していませんでした。この記事では、詳細と対応策について書いてみたいと思います。
なにが起きていたのか?
この会社は、SaaSを運営しているがプロダクトのチャーンレートも絶対数も高くPMFしきれていなかった。リード獲得のためのコンテンツマーケティング部門や法人営業などの努力により、多くの中小企業からの顧客獲得を出来ていたが、いかんせんチャーン(解約)が多くグロースフェーズの活動をしているが、PMFしきれてない状態というよりも、むしろPMFから離れていっている状態でした。
この組織での新しい機能開発の流れは、顧客獲得した会社の利用者から望む機能のリクエストをヒアリングして、それを開発のPjMが機能の追加を毎回していくという流れだった。ここにPMFしない問題の本質がありました。
SaaSがグロースしない原因とは?
この事業会社では、従来のSIer同様に顧客要求をそのまま受け取り開発をしているので、結果、その時に限った限定した顧客やユースケースのために、プロダクトやサービスを開発している状態に陥っていました。結果、SaaSプロダクトが提供する価値や全体的な世界観構築に方向性を見いだすこと事ができていませんでいた。そしてその状態に陥っていることに気づく体制、仕組み化がこの組織では欠落していました。
“機能開発"ではなく"価値提供を開発する"が重要
この事業会社には、ブロダクトの機能追加の際に、提供する・しないの判別をする明確な基準や指針がない。現実顧客要望をそのまま開発するのではなく、顧客に提供するのは「価値」で「機能」ではないことを理解して、提供価値ベース視点で計測、意思決定の仕組みを構築することが大切です。
一般的なPjMが「顧客価値提供」を阻む理由とは?
「顧客提供価値の開発」には、PjMのスキルではカバーできないことが多いです。PjMのスキルセットや組織に内向きな利害調整が中心になりがちな、彼らの立ち位置的にその仕事を依頼することが組織にとってのリスクであるばかりか、彼らに負担をかけることにもなりかねません。
日本でも希少ではありますがPdMやUXリサーチャ ー、UXデザイナー、ブロダクトマーケティング担当者の持つスキルがSaaSやソフトウェアプロダクト開発では特に必要です。
あるべき姿
この組織のSaaSのグロースに大切なのは「自社のブロダクトがどんな顧客にたいして、どんな価値を提供しているか?」というキーファクターを改善していくことです。
このキーファクターを数値化して定義している状態を目指す。 そしてこれらのキーファクターを改善の為に事業活動サイクルを回していく活動がPMFに繋がります。
ポイント
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SaaSプロダクトにおいて「顧客価値提供をしていると考えられるコア機能を提供しているか?」を組織が認識して活動サイクルに組み込んでいること。
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ブロダクトマーケティング活動の一環として、改善サイクルが顧客価値提供ベースで行われていること
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組織、体制面の課題 とくに既存のSIer等でPMをしてきた人材は、顧客から要望が上がった機能をそのまま開発してしまう事が多い。これまでに述べた理由から顧客価値提供ベースで考えることが出来ない。それはむしろ彼らのこれまでの役職としての生存戦略から外れるケースもあるため、(内部利害関係の調整など、視点が内向きになりがちという職務の性質というところにも原因はあるのかもしれない。)顧客価値提供の視点を持つ役職、UXリサーチャー、プロダクトマーケティング担当者、PdMブロダクトマネージャーといった役職が開発チームに存在して、開発を牽引、オブザーブ、ディレクション出来ていることが望まれます。
まとめ
実はこの組織はカスタマーサクセス部門でも同様の課題があり、問題のもう一つの起点となっていましたが、ここでは割愛させていただきます。本質的には顧客価値提供への取り組みや、人材面での問題が見えていないことが理由という点では、この記事での開発チームやプロセス、サイクルと同様の問題的な構図が当てはまります。
新規事業やソフトウェア開発、サービス開発は一筋縄にはいきませんが、日本の多くのITベンチャーでも同様な事例をみることがよくあります。もし初見で当たり前にこれらの事象を見抜けない、要因を見つけることが出来ないのであれば、その組織や開発チームは、顧客提供価値ベースという考えの上で、適切なスキルは持ち合わせていないと考えられます。
顧客価値提供を中心とした新規事業立ち上げ、グロースフェーズ、UX/UI、プロダクトマーケティングに関する質問・ご依頼はLYN Inc.までまでご気軽にご連絡ください。