資本主義の進化とアイデアの時代へ。資本主義は、地球上の「余白」の発見と密接に関連しているとし、この「余白」に着目して、現代の資本主義について解釈をしているのが興味深いです。

資本主義は余白を求めて、余白を食べていくことで成長していくというメカニズムを歴史的に説明しています。 「余白」が減少し無くなると(≒フロンティアを開拓し尽くすと)新たな成長の源泉を求めます。

この時代においてアイディアが新しいフロンティアとして著者は注目しており、VCとベンチャーなど現代の仕組みと資本主義の構図を明瞭に説明しています。未だに誤解されやすい資本主義ですが、認識を深める為の一助になる本です。

ちなみに補足ですが、この本で著者が射程距離にしている現代とは2010年代から2020年代前半だと思います。今現在2024年において生成AIの爆発的な普及で、知的産業の構造やヒエラルキーに変化が急速に起こっているので、この本で書かれている「アイディア」といったものをそのまま捉えるには、少し呑気すぎる状況だと考えられます。

資本主義の拡大と「余白」の消失

資本主義の歴史を振り返ると、その拡大は地球上の「余白」の発見と消失と密接に関連しています。産業革命以降、生産活動が増大し、これに伴い土地、労働、資本の消費が拡大していきました。

著者は、このプロセスにおいて地球上の未開拓領域、すなわち「余白」が減少していったとの見方を示しています。資本主義が成長する過程で、地球の資源や空間を利用し尽くしてきた側面を説明しています。

新しいフロンティアとしての「余白」

著者によれば、「余白」がなくなると新たな成長の源泉を探す必要が生じます。

歴史を振り返れば、インターネットの時代にはデジタル空間が、宇宙開発の時代には宇宙が新たなフロンティアとなりました。

フロンティアの発見とその消失は歴史を通じて繰り返され、現代では「アイディア」自体が新たなフロンティアであると述べています。

「アイディア資本主義」は現代的な資本主義の形態

資本主義の現代的な形態を、著者はアイディアを主軸において説明しています。ここからアイディアが資本を引き寄せるこの現代の構造と文化資産などの関係を考えると、興味深いことが様々に考察できると思います。ここ最近のパーパス経営やカルチャー重視の経営がバズワード化する理由も、このあたりが根底にあるように思えますよね。

アイディアを主軸においた資本主義という様態は、社会システムの変容に深く関わっており、資本主義の歴史的変遷などから説明していて、この点が面白いです。

本題からそれますが、私個人としては「パーパス経営」などバズワードに踊らされる経営やビジネスは虚構だとおもいます。しかし一般的な社会現象化していく姿を客観視することも大切だとおもいます。本来のビジネスでバズワードが先に来ることは、本末転倒だとおもいます。

ビジネスにおいて、資本主義を誤読することを回避できます

私の観点からは、労働搾取や資本主義に関する誤った見方を避けることがビジネス実践において極めて重要だとおもいます。

その点、この本は、比較的読みやすく簡易に資本主義の歴史的背景や理解を知ることができるのでオススメです。 もっと深く知りたい人はドラッカーの著作を読むと、資本主義の誕生の背景や近代西洋史・哲学史などの文脈で述べられていて、より解像度が高まると思います。

資本主義は、実態のないモノですから、とくに誤解・曲解・悪用されやすいと思います。 我々は、これらの誤解に基づく行動を避け、より健全な目的ので資本主義を理解できると、世の発展に繋がると思います。正しく理解していく姿勢は我々の社会の未来において重要だと思います。

書評 アイデア資本主義: 文化人類学者が読み解く資本主義のフロンティア

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